柔軟剤やアルコール消毒薬による被害とは?【化学物質過敏症の症状】
香水や柔軟剤の香り、アルコール消毒薬などを突然不快に感じ、それによって体調不良が起きる「化学物質過敏症」をご存知でしょうか?
化学物質過敏症は、生活を快適にするはずの便利な「日用品」や気持ちの良い「香り」など、身近なものにも使われている化学物質がさまざまな精神・身体の症状を引き起こす疾患です。
重症になると、学校に行けない、仕事や家事ができない、職場や住む場所を変えなければならない・・・など、日常生活に支障をきたすほど苦しい症状が引き起こされるのですが、後天性の疾患のため誰でも発症の可能性があります。
本記事では、有害な合成化学物質ゼロの洗浄剤「強アルカリ電解水」を取り扱うAQUXIA-Technologyスタッフが、化学物質過敏症の症状や原因について解説いたします。
化学物質過敏症の基礎知識
化学物質過敏症とは
化学物質過敏症(Chemical Sensitivity : CS)は、大量の化学物質に一度にさらされたり、微量の化学物質を長期間にわたって体内に取り込み続けたりすることがきっかけで発症するとされています。
※欧米では、多種類化学物質過敏症(Multiple Chemical Sensitivity : MCS)の名称が一般的です。
一度発症すると、極めて微量な化学物質や、原因の化学物質だけでなく、ほかの化学物質にも次々と反応を示すようになってしまいます。
化学物質過敏症は、シカゴ大学のCullen MRらのグループ により定義されています。
「過去にかなり大量の化学物質に一度接触し急性中毒症状が出現した後か、または生体にとって有害な化学物質に長期にわたり接触した場合、次の機会にかなり少量の同種または同系統の化学物質に再接触した場合にみられる臨床症状群」
<平成27年度環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究業務報告書より>
柔軟剤,芳香剤などの強い香りによってさまざまな症状が出ることもあり、においに関する症状は公害にたとえて「香害(こうがい)」とも呼ばれています。
アメリカでは10人に1人が発症しているとされ、日本では、「香害をなくす連絡会」の資料によると、成人の約6%、予備軍を含めると8.5%が、化学物質過敏症にかかっている疑いが強いと示唆されています。
また、新築の家で体調不良を訴える「シックハウス症候群」も化学物質過敏症の一種で、建材に用いられるホルムアルデヒドという化学物質に反応するのが原因です。
主な症状
原因となる化学物質の種類やその人の体質の違いによって、症状の有無・程度には個人差があります。
特徴のない症状が多く、他の疾患との鑑別が難しい場合が多いとされています。
- 自律神経症状(冷や汗、手足の冷え、頭痛、疲れやすい)
- 内耳症状(めまい、ふらつき、耳鳴り)
- 循環器症状(動悸、不整脈、血行不良)
- 消化器症状(下痢、便秘、悪心、嘔吐)
- 免疫症状(皮膚炎、蕁麻疹、喘息、自己免疫疾患)
- 眼科的症状(目の刺激感、視力低下、ピントが合わない)
- 粘膜刺激症状(結膜炎、鼻炎、のどの痛み)
- 神経・精神症状(不眠、不安、うつ症状、不定愁訴)
原因となるもの
化学物質過敏症の原因となる化学物質は、数十種類あると言われています。
- 香料等を含む洗剤、柔軟剤、芳香剤、消臭剤などの日用品や化粧品
- 殺虫剤や虫よけスプレー、農薬
- 接着剤や塗料、住宅建材
- 排気ガス暖房等の燃焼ガス
- 防腐剤や着色剤などの食品添加物 など
いったん過敏症になると、その後はわずかな量の化学物質に対しても症状が現れるようになり、場合によってはたいへん重い症状が出ることがあります。
化学物質過敏症を発症した方が抱える悩み
①相談者の声
独立行政法人国民生活センターが2020年4月に発表した「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供」によると、2014年以降、柔軟剤の香りに関する相談は928件あり、そのうち危害があったという申し出は594件(64%)でした。
相談者の方からも悲痛な声が寄せられています。
【事例1】
分譲マンションに住んでいるが、隣人が使用している柔軟仕上げ剤のにおいがきつくて頭が痛くなる。管理会社から量を控えるよう言ってもらい、一時は弱まったが最近また強くなった。どうしたらいいか。
(受付年月:2020年1月、女性・40歳代)
<独立行政法人国民生活センター「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供(2020年4月)」より>
【事例2】
5、6 年ほど前から、客の衣類から洗剤や柔軟仕上げ剤の強い香りが漂ってくると、呼吸が 苦しくなり鼻水が出るようになった。退店を促すこともできず我慢している。
(受付年月:2014年4月、男性・50歳代)
<独立行政法人国民生活センター「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供(2020年4月)」より>
事例にもあるように、普段と同じはずの日常が、突然苦しみに変わる症状に苦しんでいる方が数多くいらっしゃいます。
②周囲の無理解
化学物質過敏症を発症した方を苦しめる要因の一つとして、周囲の無理解もあります。
20~60代の男女を対象に実施した「香害・化学物質過敏症に関するアンケート調査」によると、「香害」認知度は71%、「化学物質過敏症」認知度は70%と、特に香害の認知度は年々増加しています。
しかし、依然として症状への理解が進んでいないのが現状です。
化学物質への感受性は個人差が大きく、反応する物質や程度なども人によって異なります。同じ環境にいても発症する人としない人がおり、発症者は家庭や職場での孤立にも苦しめられています。
また、専門の医師が少なく正しい診断されていないことも、周囲の無理解につながる要因の一つとなっています。2009年10月1日、化学物質過敏症は厚生労働省によって認められ、病名は中毒の項に分類されて登録されました。
シックハウス症候群が多発した1990年代から、発症者をはじめ各市民団体は国に対して病名を認めるよう訴え続けてきた結果です。
しかし、病名の登録から日が浅く、別の疾患や原因不明と診断されてしまうことも少なくありません。
正しく診断されていない潜在患者は多数いるものとみられており、全国で100万人程度になるのではないかと言われています。
まとめ
化学物質過敏症の対策をするために
化学物質過敏症は、発症の仕組みについては未解明な部分が多いため、いま現在、心当たりのある症状で悩まれている方は、少しでも原因となるものを遠ざけることが重要です。
また、化学物質過敏症の症状が日常生活に支障をきたすほど非常に苦しいものであり、潜在患者含めて多くの方が悩んでおられます。
当事者の家族や周囲の方が、配慮のない言動や行動、無理解によって発症した方をさらに苦しめることが無いよう、人それぞれ違う症状や原因について理解することが重要です。
関連記事 ⇒ 化学物質過敏症の治療は難しい?対処法は?【化学物質過敏症の対策】
参考ホームページ
・平成27年度環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究業務報告書(学校法人東海大学)
・化学物質過敏症の予防・対処法(化学物質過敏症ハンドブック(第2版))
・独立行政法人国民生活センター「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供(2020年4月)」
・6月5日「無香料の日」に向けた「香害・化学物質過敏症に関するアンケート調査」を実施。人工的な香料を不快に感じたことのある方は71%。「香害」についての認知率は71%で、昨年より15ポイント増加