ワインタンク内の酒石を落とすの、結構大変ですよね?
ワインの原材料であるブドウを収穫前にワイナリー全体を清掃して、各種設備や器具を殺菌するのが一般的ではありますが、その中でもタンク内の清掃・消毒が骨が折れる作業のうちの一つではないでしょうか?
タンクはワインを全て抜いた後、洗浄して乾燥させているので一定の清潔度は大抵保たれています。私も何か所かのワイナリーのタンクを見て、ぬめりやカビで汚れているといったことはありませんでした。
しかし蓄積された酒石が残っている場合が多いのです。酒石はタンク内で結晶化し、こびりついているので中々、通常の洗浄ではとれないのです。
酒石はブドウの酸味成分とミネラルが結合してできた物質なので人体に影響はないのですが、有機物のため多くの量をこびりついた状態にして放っておくと微生物の繁殖の原因となります。
酒石を洗い流すよう様な洗浄は主に3通りほどあります。ポイントは温度・力・洗浄液です。
1つ目は蒸気をタンクに充満させ熱で殺菌をして酒石を水で洗い流す方法です。非常に短時間で簡単にできるのですが、熱に弱い樹脂製のタンクに使用できないことと室内にタンクがある場合、室温が上がってしまうのが欠点です。
2つ目は高い圧力で洗浄することです。つまり高圧洗浄機や高圧ノズルを使用したCIPシステムを使用することです。ただこれも高圧に弱い樹脂製のタンクには使用できないうえに、高圧洗浄が及ばない細かい箇所に意外に酒石が残っているのです。
3つ目は水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性の洗浄液を使用することです。酒石は酸性の性質をもっているので洗浄液に反応して洗い落とすことが出来るのです。この方法が現時点で酒石を確実に落とせるのではないでしょうか?
ただこの方法だと事前にタンクを洗浄してさらにタンク内を中和させるために酸性の水で洗浄しなくてはならなかったり、水酸化ナトリウム水溶液自体、刺激性の強い薬品なので取扱いにかなり注意しなくてはいけません。
私がワイナリーを訪問した限りではやはり3つ目の方法で洗浄しているところが多かったです。
ですので、水酸化ナトリウム水溶液の替わりに炭酸カリウム水溶液を電解した強アルカリ電解水をおすすめしたりしています。なぜなら水酸化ナトリウム水溶液と同じ洗浄力を持ち合わせつつ、事前洗浄がいらないのと刺激性がないので取扱いが非常に楽だということです。